PAPA_MAMA, REPORT

【ママライター講座作品②】 変わらずそこにあり続ける自然/照本夏子


「変わらずそこにあり続ける自然」   照本 夏子

 

足利市駅の目前に広がる渡良瀬川の風景――私はそれに強烈なノスタルジアを感じます。

「足利の魅力」……それは変わらずそこにあり続けるたくさんの自然です。

 

渡良瀬川の風景を心待ちにする私

 

私は高校を卒業して以来、今年の3月までの20年間、足利を離れて暮らしていました。

どこに住んでいても、年に2回は帰省をしていましたが、中でも10年以上暮らしていた広島からの帰省は、私に故郷の自然を眺めるたくさんの時間を与えてくれました。

うんざりするほど長く乗車した新幹線を降りて、浅草までたどり着くと、ようやく足利につながる東武伊勢崎線の「両毛号」。東京を離れるにつれて広がっていく田園風景。足利市駅のホームから見える雄大な渡良瀬川。

 

最初の頃は、長旅に飽きて騒ぎ出す我が子の気を紛らわすのに必死でした。

流れていく風景は、子供と眺めて時間をやり過ごす、ただそれだけのためのものでした。

降り立った足利市駅の風景など、大荷物に子供を抱えた私の目に入るはずもありません。

しかし、帰省も回を重ねるごとに子供は大きくなっていきます。ただ流れていくばかりだった、子供と眺める「両毛号」からの風景には、県の名前、市の名前、駅の名前、施設の名前、小中学校の名前・・・と少しずつ具体的な名前がついていきました。

本から顔をあげて、ふと横に見える田園風景に、ほっとする余裕もできました。

そしていつしか、足利市駅が近づくと、早めに席を立ち、渡良瀬川の風景を心待ちにするようになりました。

 

「こんなにも自然の美しい街だったのか」

 

きっと、その頃からです。足利に、足利の自然に、もっと触れたいと思うようになったのは。

帰省する度に、織姫山や両崖山、大岩山や名草の巨石群と、低山や自然公園を散策するようになりました。

小さいころから見慣れているはずの自然は、子供に案内をしながら一緒に歩くと新しい発見の連続でした。最後はいつも、頂上や高台の木々のみどりの間から、足利の街とそこに横たわる渡良瀬川を眺めます。

『こんなにも自然の美しい街だったのか』

帰省を繰り返すたびに、私はそう思うようになりました。

そして私は、再び故郷の足利で生活することを意識し始めました。

 

20年ぶりに足利に戻る

 

平成27年3月22日。広島駅のホーム。新幹線に乗り込み席に座ります。眠くなって目を閉じると、かすかな緑が瞼に広がります。

「これが最後だな」。

いつものように、長く疲れる新幹線を降りて、浅草へ向かいます。

そこから両毛号に乗車。隣では、今年中学生になる子供が静かに本を読んでいます。風景は、街から田園に変わり、土手が見えてきます。私たちは、席を立ってデッキに向かいます。到着。駅前に広がる渡良瀬川は、ようやく自分の街の風景になりました。

 

私はこのように、足利の自然の美しさに後押しされて、20年ぶりに足利に戻ってきました。

私の例は特別なのかもしれません。しかし、何度訪れても変わらず迎えてくれるものの存在は人の心を温かくし、再来を誓わせるものだと思います。

――だからこそ、足利の魅力は、「変わらずそこにあり続ける自然」であると私は考えるのです。

RSS Feed  Posted on 2015-07-21 | Posted in PAPA_MAMA, REPORT | No Comments »

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