コラム
「地方創生」の号令の元、全国の地方都市が一斉に地域の活性化に向けて動き出しています。桐生市は群馬県内12市の中で、人口減少、高齢化率が一番高く、地域が抱えている課題も深刻かつ緊急であると感じています。
私は、「田舎にいても仕方がない」という思いで、高校卒業と同時に進学で都内に上京。それからというもの桐生との関わりはほとんどありませんでした。そんな私が、桐生にUターンしたのは、約一年半前のことです。桐生を離れていた約十年間に、社会はものすごい勢いで変化しました。大型ショッピングモールの台頭、インターネット環境の整備、携帯電話・スマートフォンの普及―。これらは、私たちの生活を便利にする一方、そのスピードについていけない地域の現状もありました。
桐生のまちの衰退を見たときに「いつの間に!きっと、私みたいに地域に関心を持たない人が増えたから、商店街もシャッター通りになってしまったのだろうな」「このまま放っておいたら、十年後、二十年後、ここで育つ子どもたちが大人になった時に、どんな地域の未来を迎えることになるだろう」「私は、その未来を見たときに後悔しないだろうか」「子どもたちに、誇りを持って地域のことを話してあげられるだろうか」そんな思いが湧きあがりました。
子どもたちは大人の姿を見て育っていきます。地域に輝いている大人が増えることで、そして、地域の未来をイキイキと語る大人が増えることで、子どもたちが描く未来も変わってくると思います。
しかし、若者・子育て世代が置かれている現状は、核家族化、地域コミュニティの脆弱化などによる、子育てへの不安感やストレスの増加。終身雇用の崩壊による不安定な雇用形態。暮らしも仕事も慌ただしく、心にゆとり持てない状況に追い込まれています。
私が代表を務めるNPO法人キッズバレイは、「若者・子育て世代の『暮らし』と『仕事』を支援して地域経済活性化」を使命とし、2013年11月に設立。山に囲まれた豊かな環境(valley)である桐生を、子育てしやすく、子どもたち(kids)が世界へとはばたいていけるホームにしていきたいという想いを込め「キッズバレイ」と命名しました。
地域活性化は、もはやこれまでのやり方は通用しません。新しい考え方や新たな仕組みを取り入れて、若者・子育て世代が笑顔で、心にゆとりを持って暮らし、働ける社会にしていきたい。そして、「子どもたちに誇れる地域」を自分たちの手で築き上げていきたいと思います。キッズバレイでは、ママやパパの暮らしや子育てを支援する活動、クラウドソーシングを活用し働き方の選択肢を増やす取り組み、起業・創業支援、コワーキング&コミュニティスペースの運営、そして、子どもたちが体験を通じ学び合える環境づくり。若者・子育て世代を取り囲む多様な分野から、地域に変化をもたらしたいと思います。
(本文は、2015年12月に上毛新聞 視点オピニオン21 に寄稿したものです)