コラム
群馬県は東京都内から2~3時間で行き来ができるので、ほどよい田舎だと思っています。山が見え、空が広く、星が輝き、季節の移り変わりを感じることができる。都内では感じることのできない潤いが、ここにはあります。
先日、都内の若者と地方を結ぶ事業を行っている会社の方と情報交換する機会がありました。都内の学生で、大学卒業後、地域活性化に関わりたい、地方都市で働きたいという要望を持っている学生も一定数いるが、如何せん、地方とどのようにつながったらよいか、分からずにいるといいう話を伺いました。
今、2カ所以上の生活拠点を持つ「マルチハビテーション」(マルチ=多様)(ハビテーション=住居)という暮らし方や、場所を選ばず働くことのできるリモートワーキングなど、暮らし方、働き方は、柔軟で多様になってきています。
私も、1年程、桐生に生活拠点を置きながら、東京と桐生を行き来しながら働くというスタイルをしていました。今、身近にも同じような働き方をされている方もいらっしゃいます。確かに苦労することもありますし、楽しいだけではありません。ですが、行き来することで、新しい情報や視点、人とのつながりを得ることができました。
地方も定住を前提とした移住のみならず、多様な受け入れ方や、関わり方を考えていくことが大切だと思っています。なぜなら、地域活性化で大切なのは「人」だと思うからです。それも同質の人だけでなく、多様な考えや経験を持った「人」が集まるってくること。しかし、「地方=閉鎖的」というイメージは、どうしてもつきまといます。そのイメージを払拭していくためには、地方の側から発信していかなくてはいけないと考えます。「どうせ…」と、二の足を踏む地域、「やってみよう」とチャレンジしている地域。どちらの地域になるか、それは行政だけが決めることではないと思います。「やってみよう」と思った市民から行動し、地域を変えていくことだってできると思います。
そして、動き出したなら、地域の中で、そして地域間で対立するのではなく、お互いに情報やノウハウをシェアしていくこと。別々の取り組みと線を引いてしまうのは簡単かもしれません。しかし、それでは大きな力にならないのです。お互いに、刺激を受けないながらも、個性を発揮していく―。
都市と地方、地域と地域は共に補い合い、人がより創造的で、豊かな人生を歩むことができる可能性を作り出すことができると思います。そのためにも、地域の窓口になれる多様な団体や個人が情報を発信し「見える化」する。そして、情報をシェアし、よりよい未来を共に創造していく姿勢をもつことで、地域に新たな変化をもたらすことができるのではないでしょうか。
(本文は、2016年6月に上毛新聞 視点オピニオン21 に寄稿したものです)