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誰もが一員になれる場
誰もが一員になれる場

  
 キッズバレイは桐生の商店街の中心部に拠点を構えています。子育て世代の支援を謳うNPOがなぜ商店街に事務所をおくのか?もっと子育て世代が集まる場所がいいのではないか?と、設立当初は商店街からも疑問視される存在でした。しかし、まちの顔である商店街に拠点をおき、まちづくりに関わりながら活動をしていくことが、私たちにとって譲れない条件でもありました。
 

 今、日本各地で中心市街地の衰退が嘆かれています。桐生の商店街も例外ではありません。桐生中央商店街の理事となり、運営に参加するようになって「商店街の役割とは何なのか」改めて考えるようになりました。
 

 桐生の商店街では、季節ごとに様々なイベントが開催されます。先日開催された、「吹奏楽まちなか野外コンサート」は、地域の小中高校の吹奏楽部、管弦楽部が集まって、日頃の成果を商店街のど真ん中の野外ステージで披露します。その日は、まちに美しく、明るく、軽やかな音楽が響き渡りました。小さな子どもからお年寄りまで、ここに暮らすたくさんの人が集まり、秋の1日の体験を共にします。その他にも、真夏に雪を降らせるイベントや、「トリックオアトリート」と言って商店街をまわりお菓子をもらうハロウィンイベント、若い出展者が出そろうマーケットなど、たくさんの催しが行われています。そんな、商店街で開催される催しからは、「子どもたちに商店街は楽しい場所だと感じてほしい」「成長を見守りたい」「地域の方が集える場所にしたい」「安心して生活できるまちにしたい」など、たくさんの思いが、ひしひしと伝わってきます。
 

 夏休みを利用して東京から大学生がキッズバレイへインターンに来てくれました。彼は、桐生の高校に通っていて、大学で地域活性化について学んでいるそうです。インターン最後の報告会で「僕が高校生の時よりも、お店が増え、まちが元気になったような感じがする」「商店街はコミュニティだと感じた」とまとめてくれました。 商店街が主催したイベントだけでなく、古民家を改装したお店でマルシェがひらかれたり、桐生らしく着物でまち歩きのイベントが行われたり、今、「自分たちのまちを盛り上げたい」という志を持った人たちが、増えているように感じます。
 

 商店街は、単なるお店の集合体ではなく、そこで暮らす人たちが心地よく暮らすためのコミュニティであるということ。また、物を消費するだけの場ではなく、誰もが参加でき、まちの一員になれる場所であるとも思うようになりました。
 

 私自身、高校生の時は通学路で通り過ぎるだけだった商店街で、今、このように働き、人々の思いに触れ、活動できていることで、東京では感じることのできなかった、充足感を覚えています。

 
(本文は2016年9月に上毛新聞 視点オピニオン21 に寄稿したものです)